アルバム"Bitches Brew"1970年
の1曲目です。
Miles Davis – trumpet
Wayne Shorter – soprano sax
Bennie Maupin – bass clarinet
Joe Zawinul – electric piano –L
Larry Young – electric piano –C
Chick Corea – electric piano – R
John McLaughlin – electric guitar
Dave Holland – bass
Harvey Brooks – electric bass
Lenny White – drums – L, Jack DeJohnette – drums– R, Don Alias – congas
Juma Santos (creditedは"Jim Riley") – shaker
"Kind of Blue"と並んでMiles Davisのヒット作です。作曲はキーボードの"Joe Zawinul"
とクレジットされています。Jazz史において革新的な作品と言われますが、そんなことよりヘッドフォンで大音量で集中して聴いてください。
私には瞑想しているかのように集中力が高まり、邪念が消えていく気がする作品です。
ここに参加したミュージシャンはすべてこれから後のContemporary Jazzを切り開いていくことになる精鋭揃いです。この作品はJazzを大きく変えたと言われる作品でもありますが、1920年代に派生してきたJazzの何が変わったというのでしょう。
Jazzのオリジン(起源)でもあるDixieland Jazz(Hot Jazz)はメロディーとそれに付随する和声進行の上でインプロビゼーションが展開され構築されます。
その意味では"Bitches Brew"も同じです。変わりはありません。
Swing JazzからBop Jazz,Modal Jazz,Free JazzとこのJazzの発展の流れは、
ミュージシャンがインプロビゼーションの可能性を追求し、
”完成曲の新鮮さ”を求めた結果であるのです。そしてその流れの延長線上にこの"Bitches Brew"もあります。
人間の日々沸き起こる感情-"笑い"-"怒り"-"戸惑い"-"安堵"-"共感"-そして共生を求める"人の感情を音で現したい"それが演奏家の想いであり、感情の種類はたくさんあるのだから、それを表現する土台のリズムとハーモニーには多様性があったほうがいい。
だから"Soul"の形式を取り入れてみよう、"Latin"の形式を取り入れてみよう、それが
"Soul-Jazz"や"Latin-Jazz”さらには"Afro cuban-Jazz"とサウンドを広げていったのです。
"Swing Jazz"から”Modal Jazz"への動きも同じ意味合いです。
"Swing Jazz"で演奏される、いわゆる"Ⅱ-Ⅴモーション"の曲ではソロを演奏しても
できることが限られ、いつも同じようになってしまう。
ソロをもっと自由に。発展性を求めた結果が"Modal Jazz"への動きとなったのです。
"Bitches Brew"は"Rock"と”Jazz”の融合させた作品とよく言われます。その場合
"Rock"とは何を意味しているのでしょう。
単純に"Swing beat"のリズムではなく、"8beat"のリズムを使っているところを理由にあげる人が多いようですが、"Bitches Brew"のビートはいわゆる"8beat"ではありません。
"Soul-Jazz"や"Latin-Jazz”"Afro cuban-Jazz"のようにドラムのフレーズが
そのものズバリ!であれば筋も通りますが、そういうものでもありません。
ただ言えるのは、"Swing Jazz"は1拍を3つに分けてワルツのように体を揺らしてリズムにのって楽しめるようになっていますが
一方、"Latin-Jazz”や"Rock beat"といわれているものは1拍を2つに分けて左右・上下にのって楽しめるようになっています。
この1拍を3つに分けるのか~triple time~、2つに分けるのか~double time~で音楽のジャンルが分かれます。
"Swing","Six-eight","shuffle","boogie"は~triple time~系です。
”Ska”,"Rock beat","Latin","Afro cuban","Funk","Hard Rock"は~double time~系です。
~triple time~系はテンポが遅めで身体を揺らす”のり方”で”まったり”した感覚です。
~double time~系は早いテンポでも”のって楽しめる”攻撃的で繊細な感覚です。
その認識のもとで"Bitches Brew"を聴いてみてください。
演奏家がどういう感情を表現したかったかわかっていただけると思います。
密度が細かく、繊細な表現ができるようになるのです。
ではこれからこのメンバーたちの作品を追っていきましょう。