2018年公開映画"Bohemian Rhapsody"
このPR movieではロックバンド
"Queen"の伝記映画のように思われるかもしれませんが、
これは"Freddie Mercury"のマイノリティーとしての苦悩を描いた作品です。
この作品を観て、Queenの楽曲の伝えようとしている世界への理解が深まりました。
ファンの方が当時を思い浮かべてエンターテインメントとしてご覧になるのは勿論、
かまわないのですが、それだけでは勿体ない人間のアイデンティティーの形成と幸福感をどのようにして確保するのか、を切実に訴えてくるすばらしい映像作品です。
アルバム"Queen-戦慄の王女"収録
Freddie Mercury – vocals organ
Brian May – guitar, vocals
Roger Taylor drums, vocals
John Deacon - bass guitar
"Freddie Mercury"はペルシャ人の子"Farrokh Bulsara"としてインドで生まれ、英国領の東アフリカ"Zanzibar"で育ちます。
しかし内戦が起き英国の息がかかっているアラブ系インド系の住民が殺される事態になり、英国に難民として両親と共に逃げてきた、ある種、難民です。
父が政府系機関で働いていたこともあり、しっかりした教育を受けてきましたが、英国ではアラブ系であると差別を受けました。加えて、生まれながらの過剰歯で歯並びも悪かった。それらが要因となるマイノリティーとしての差別に苦しめられて成長してきたのです。それらは彼に出自に反発を抱かせるのに充分でした。
そこで彼は名前を"Freddie Mercury"に変えたのです。
この曲はまだ"Farrokh Bulsara"を名乗っていた1970年頃に彼が書いた曲です。
彼のマイノリティーとしての苦悩が詩に現れています。
Queenの曲の作り方は誰かがメロディーと基本的構成とリフ、などを提示したら、あとは全員で肉付けをしていく、という方法をとっていたようです。
"Freddie"にカリスマ性があってよく知られているので、彼が制作をハンドルしていたと思われがちですが、皆が曲をかくし"Freddie"もドラム、ギター、ベースに関しては
イメージは出すけれど具体的な決定ができるまでの演奏力はなかったようです。
The Beatlesの"Paul McCartney"ならば自分の作曲作品についてはドラムを含め、全楽器を弾けるのでフレーズまで具体的に指示していたことが多いと思われますが、
"Freddie"の立ち位置はThe Beatlesにおける"George Martin"のようなものだったのかもしれません。曲をかく"George Martin"でしょうか。
映画の中で、"Freddie"がCBSとソロ契約をして、ミュージシャンを集めてレコーディングしたんだが、『作品化していく意見交換が起きないので音楽にならない』とメンバーに吐露する場面があります。それはそういうことを示しているのです。